大学3年生の時、同時進行で別の男性と二股をかけていました。
相手は、4つ年上の社会人の男性。
就職活動の一環として、インターンシップを行っていた私。
その実習先の会社で、私は彼と出会いました。

「分からないことがあったら何でも聞いてね。
すぐ駆けつけて飛んでくるから」

カラッとした爽やかな口調でそう話す、その姿はとても凛々しく―
ポーッと頬を染めて、彼の顔を見詰めていたことを覚えています。

(これが社会人の男性かあ・・・大人っぽくて、結構素敵かも)

当時、同い年の大学生と付き合っていた私。
が、彼を見た瞬間、自分の彼氏が大した魅力のない、
退屈な男に思えてきました。
とはいえ、その男性と浮気する気は更々ありませんでした。
合わないと感じる時もあるけれど、なんだかんだいって、
私は彼のことが好きでしたし。
‟愛する彼氏を裏切るような真似は、絶対しまい”
そう固く心に誓っていました。

―その気持ちが大きく揺らいだのは、それから半年後、
二人きりになったオフィス内での出来事。

「たまには甘いもの食べてゆっくり休まないと駄目だよ。
はい、これ」

そう言って彼から差し出されたのは、銀紙に包まれた、
一粒のチョコレート。
ああ、なんて美味しいんだろう。
それを口にした瞬間、とろけるような甘い香りが
胸いっぱいに広がっていくのを感じました。

「ふふ、そんなに美味しい?じゃあ、もう一粒」

そう言われ、彼の顔を見上げたその瞬間―
キスして欲しい。
そんな淫らな気持ちが、胸にムクムクと湧き上がってきました。

(わ、私ったらいま、心の中で一体何を―!)

頬が真っ赤になり、慌てて彼から視線を外しました。
彼氏以外の男性にこんな感情を抱くなんて。
絶対だめよ!早くこの場から逃げなきゃ!
そう思ってるはず、なのに。なぜか、私の足は一歩も動きませんでした。ただ黙って視線を手元に遣っていたその時―
不意うちで、彼にキスをされました。
それも短いキスではなく、とろけるような長い長いキスを。

「ご、ごめん。いきなりはちょっと嫌だったかな」

額に冷や汗を浮かべ、彼はそう言いました。
私はといえば、突然の出来事に思考処理能力が追いつかず―
数十秒ほど、その場で固まってしまいました。

「い、嫌じゃないです。むしろ・・・」
嬉しい。もっとキスして欲しい。
なんて、言いそうになって、慌ててギュッと口を閉じました。
内心の動揺を隠そうとしましたが、時すでに遅し。
私の真意を見抜いた彼は、顔をグイっとこちらに近付け、
身体ごと強く私を抱き締め、耳元でこう囁いたのです。

「良かったら今日、俺の家に来ない?」

そして私と彼は、いわゆる‟そういう間柄”になりました。
インターンシップが終わった後も、
メールで秘かにやり取りをして、彼と遊んでいました。
悪いことをしているという自覚は、もちろんありました。
しかし、(今まで知らなかったオトナの世界をもっと知りたい)
そんな淫らな気持ちが、私の中で勝ってしまったのです。

その彼とは2年ほど付き合い、そして別れました。
甘い言葉を囁かれてオトナの世界へと引きずり込まれた私。
ああ、なんと幼かったのだろう。
当時を振り返り、しみじみとそう思います。
だけど、最高に楽しかった。
彼との出会い、そして共に過ごした日々は一生忘れることのない、
素敵な思い出です。

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